◆総務省の「モバイルビジネス活性化プラン」
2007年1月~9月に総務省が「モバイルビジネス研究会」を開催し、同年9月に「モバイルビジネス活性化プラン」が発表されました
。
本検討を開始するにあたっての背景としては、モバイルビジネス市場は急速な成長期から次第に成熟期に移行しようとしていること。ブロードバンド化やIP化の進展による市場統合等が今後急速に進むことが見込まれる中、キャリアの垂直統合型ビジネスモデルに変え、オープン型モバイルビジネス環境を創出することにあったようです。
「モバイルビジネス活性化プラン」としては、2011年を目標として、大きな柱として3つ上げられています。
①販売モデルの見直し
・販売奨励金の見直しやSIMロック解除など。ごく簡単に説明すると、これが実現されることによってキャリアと携帯端末が分離されることを目指しています。iPhoneが7月に発売されました。現在はSoftBank契約者しか利用できませんが、どのキャリアでも利用できるようになるということです。
②MVNOの新規参入の促進
③モバイルビジネスの活性化に向けた市場環境整備の推進
・NGNなどの固定網と連携させたサービスを作るための、認証IDや位置情報、課金を共通利用できるプラットフォームの整備や通信端末や通信技術の共通化など、法体系も含めて総合的に整備していくということです。
◆2011年に向けての市場環境の変化
2011年を目標としているのは、以下のようなモバイル環境変化が見込まれているからです。
① 3.9GやBWA(Broadband Wireless Access)が実現または実現する方向で進み、固定系ブロードバンドに比肩する通信速度によるIPベースのサービスの本格的な展開が見込まれること
② 固定通信分野においてネットワークのIP化が進展し、固定通信と移動通信を統合的なネットワークで運用する次世代ネットワークの構築が進み、従来の回線交換網に代わり、IP網ベースのサービスが主流になると考えられること
③ 地上テレビジョン放送のデジタル化が進展しており、2011年7月の時点で現在のアナログ波による放送を停波し、放送のデジタル化が完了するとされていること
通信だけでなく放送の分野も含めて、これからの3年は大きく環境が変化していきます。また、キャリアの垂直統合型ビジネスモデルといわれている現状のビジネスモデルを崩していくという動きもおきています。
ちなみに、キャリアの垂直統合型ビジネスモデルをもう少し詳しく説明すると、「端末」、「ネットワーク」、「プラットフォーム(課金や認証、OSなど)」、「ポータル」、「コンテンツ・アプリケーション」のすべてのレイヤーをキャリアがサービス提供していることです。日本においてはコンテンツ・アプリケーションレイヤーはキャリア側に育成をしていこうという意図があったため、比較的コンテンツ・アプリケーションレイヤーはキャリアと独立して発展してきたように思えます。
◆携帯OSと海外勢の意図
海外の動きとして、気になるのは携帯向けOSのオープン化の流れです。googleのLinuxベースの「Android」、シンビアンOS、WindowsMobileなど、携帯OSに参入してきています。
市場規模だけでも、PCのユーザーは全世界で11億人だが、モバイル端末では、33億人と格段と多い。また、固定電話回線の施設費用にくらべて、モバイルインフラのコストは小さい。つまり今後の広がりから考えてもPCよりもモバイルの拡大の方が大きく見込まれる。そして、PCのような爆発的なWEB2.0的サービスが起きていないことを考えると、まだまだ世界的に市場が拡大していくと考えて、モバイルビジネスで最も進んでいる日本に参入してきたいと考えているのではないかと思います。
もしかすると、キャリアの垂直型ビジネスモデルを崩そうという意図の中には、こういった海外勢の意図も随分入っているのかもしれません。
◆変化の中で作っていくべき強みとは?
上記のような変化の中では、我々は今までと同じ考えで進めていくことは難しいと思います。
モバイルコンテンツビジネスで、重要だったのはキャリアの公式サイトになることであって、キャリアに企画を通すことでした。
そうすることの大きな意味はキャリアのポータルに掲載されることで大きな集客が見込まれたからです。
しかし、例えば、端末がキャリアから分離されたらどうなるでしょうか?端末メーカーが自らポータルを作り始めるかもしれません。そうなると、今までように大きな集客をポータルに頼むことが難しくなってくるでしょう。かなりビジネスの前提が変わってきます。
そんな中、企業として競争力を持って展開していけるための要素として、以下の3点が重要だと私は考えています。
①コンテンツ制作力②UI③データベースマーケティング・分析力
①のコンテンツ制作力は当然だと思われますが、実はモバイルにおける本当にユーザーの支持を受けるコンテンツとはどのようなものなのか?ということは、まだ出てないです。新聞、テレビというコンテンツ制作力を充分にもった分野からの本格参入も予想される中、それ以上のコンテンツ制作力を持っていこうとしなくてはいけないと思います。
②に関しては、あえて今まで問われていませんでしたが、iPhoneなどのリッチ・インターフェースのモバイル端末が登場してきたので、OSのオープン化とも合わせて、競争力の重要な要素になってきます。PCにおいて、MS-DOSからウィンドウズへ移行してきたことに似た現象が起きてくるのではないかと思います。
③のデータベースマーケティングは、ユーザーの求めるもの、今後現れてくる変化を科学的にとらえていく意味で重要な視点です。重要であることを認識して、徹底的に強めていく必要があります。今はコンテンツの料金設定も、各サイト別にあまり変化がないですし、ユーザーの嗜好性を分析してセグメントを発見していくよりも、大量のアクセスを集める方が重要だったりしますが、ある意味ざっくりで、勘で進めていて大丈夫だったものが、徐々に緻密に分析しなくてはいけなくなってきます。企業として分析力が他社との差別化の重要要素になるまで高めていきたいものだと思います。
以上、変化の中で作っていくべき強みについて考えましたが、さらにビジネスモデルとして、MVNOなども想定したプラットフォーム、ポータル事業へ進出していくことも当然求められますし、検討すべき事項かと思います。