情報大爆発(秋山隆平著 宣伝会議)
最近、情報過多の時代という言葉を耳にすることがあります。ちょっと前は高度情報化時代ということが言われていましたが、情報化を越えて情報過多の時代に入ってきたようです。情報過多というのは、人間の脳が処理しきれない情報が毎日溢れて、そのストレスでADT(注意欠陥特質)という病気が発症するほどです。
米LexisNexisが米ホワイトカラー650人を対象にアンケートをとったところ、次のような結果が得られました。
・回答者の40%以上は,将来的な情報フローの増加に対処できないと考えている。
・ホワイトカラーは,1日当たりの平均的な就業時間である8.89時間のうち,7.89時間を調査,会議,以前に作成したドキュメントの検索にあてている。
・また1日の就業時間中,ホワイトカラーは平均2.3時間をオンライン調査に使っている。回答者の1割は,1日平均4時間以上をオンライン調査にあてている。
(IT Proの記事よりhttp://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Research/20080227/294885/)
もっとも、このアンケート対象者は250人の法律関連の専門家を含んでいるので、調査に多くの時間を取られている人が通常に比べると多いのかもしれないですが…。
しかし、確かにWEBを使って何かを調査しようとしたときに、なかなか情報に辿りつけなかったり、関連情報が多すぎて処理しきれなかったりすることは結構あります。
ユーザーとしては良質かつ必要な情報にいつでも辿りつけることが望ましいのですが、なかなか欲しい情報を得るまでにその他の多くの情報を処理しなくてはいけないです。
検索エンジンは、ユーザーが効率よく欲しい情報にアクセスすることのできるものとして生み出されました。しかし、検索エンジンを使いこなすためには、検索スキルが要求されます。もっともっと多くの情報がインターネットに溢れた時に、情報の生まれるスピードや、その情報量に今の検索エンジンで対応しきれるでしょうか?
アメリカの認知心理学者、ハーバート・サイモンという人が「情報過剰時代にはアテンションが希少になり、それを消費する 膨大な情報減に対して、アテンションを効率的に割り当てる必要が生じる。」と言っているそうです。つまり、情報そのものの価値はどんどん下がっていて、逆に情報を消費する側のユーザーの時間の価値がどんどん上がっていくということです。そう考えるとネットでは多くのトラフィックを稼いでいる検索エンジンが、現在、多くのユーザーの支持を受けているのもうなずけます。
しかし、今の検索エンジンでは今後の情報過多時代には対応できなくなることを見越して様々なところで、次世代検索エンジン、推奨エンジンなどが研究されています。
これらのエンジンで、ユーザーに情報を提供するための基礎データとなるのが、個人の行動履歴です。
米ではアテンション・トラスト(信託機構)というNPOができてます。このサービスはユーザーが自分のネット上でのすべての記録(ログ)をアテンション・トラストに信託して、別のマーケティング会社を通して、ユーザーログを企業に販売するということをしています。また、AttenTVというサイトを通して、会員通しのログを互いに見られたりもします。ユーザーは見返りとして、お勧めの情報をもらったり、ログの販売額の分配を受けたりするようです。
また、ユーザーの批判を受けたり機能的な課題もありますが、フェースブックではフェースブック・ビーコンというサービスも試されました。このサービスでは、フェースブックの会員がビーコンの埋め込まれたWEBサイトで何かの行動を取った場合、その行動データが有人たちに配信されるというものです。これは自分の行動履歴を有人たちに公開して、次のコミュニケーションのきっかけにしたり、友人たちから行動履歴に基づいたおすすめ情報をもらったりするという展開に繋がったりします。
情報過多の時代では、情報を発信する側ではなく、情報を受け取る側に主導権が移ってきます。情報の受け手に支持をされ、多くの時間を使ってもらえるサービスは、逆の発想になりますが、ユーザーがより効率的に時間を使うことができるサービスです。そのサービスを生み出すためには、ユーザーの行動履歴を抑えることができることが必勝戦略だと思われます。
携帯電話はライフログを取るには、非常に適したツールであるし、モバイルのキャリア主導のビジネスからオープン化の流れは押しとどめることは難しいので、早晩、モバイルの中でもユーザーは大量な情報にさらされるようになっていきます。個人的にはコンテンツや情報の価値は下がって欲しくはないですが、機能やシステム的にユーザーが情報の海から、いつでも欲しい情報を提供できるサービスは求められるものになると思います。今後も情報過多という現象については注目していかなくてはいけないと考えています。
- インターネットという技術革新は、なんと、あらゆるメディアの物流面でのボトルネックを解消してしまった
- その結果、UGCと呼ばれる消費者発信情報が激増してきた。そして、バリューチェーンの末尾に、新たなボトルネック、「アテンション」が出現してきた。
- 獲得したアテンションの比率は、そのまま、広告収入の比率になっている。
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情報大爆発―コミュニケーション・デザインはどう変わるか
秋山 隆平 宣伝会議 2007-10-15 by [Z]ZAPAnetサーチ2.0 |
